今回は、「選択的注意」についての話です。その名の通り、「選択して注意を向けること」についてです。注意を向けるときってどんな時だろう?そして、注意を向けた時、起こることってなんだろう?という内容について触れていきたいと思います。私達の脳は不思議で難解で、それでいて面白いんです。
では、早速いきましょう!
注意的選択とは?
目の前に様々な情報が溢れている時、私達は自分の注意を向けることで「それがなんなのか?」を認識しています。
例えば、
普通にお家で生活しているときに、テレビだったりPCだったり、冷蔵庫だったり電子レンジだったりと、色々目に映っているけれど、私達は毎回それが目に入るたびに「あ、テレビだ。冷蔵庫だ。」とは思いませんよね。それでも、例えば冷蔵庫が突然無くなったら、何となく違和感を感じ、そのうち「あれ!?ない!」って気付くことが出来ます。
必要の無いときは素通りできて、必要のある時は、意識をそちらに向ける、もしくは意識を向けさせるような変化などがあった時、それを認識します。
このように様々な情報の中、必要なものに対し意識を向けることができる事を
「選択的注意」と言います。
もし、私達に「選択的注意」がなかったら、おそらく日々の生活も困難を極めます。
目に入るもの全てが意識され、耳から入ってくる全ての音が意識されたら、私なら目を閉じて耳栓をして暮らすかもしれません。それでも地面に触れている感覚や、舌が歯に当たっている感覚、部屋のにおいなどが常にありそうなのでそれでも尚、疲れてしまうと思います。
ですので、「選択的注意」は私達にとって欠かせない機能です。
さて、今日はその「選択的注意」の不思議と、面白さについて触れていきたいと思います。
沢山の人がいても
例えば同窓会などが開催された時、
沢山の人が集まってザワザワしている中に、私がいるとします。
色んな友人たちとの会話もひと段落して、私が少し休憩でもしようと考えていた際に、
「○○さ~~ん!」と私の名前を呼ばれたとしたら、わりかしそれに気付く事ができます。
周りが依然としてザワザワしていてもです。
ザワザワとしている中で、自分の名前を呼ばれたり、自分が気になっている事柄に対し、気付く事ができる事を
「カクテルパーティー効果」と言います。これは絶対に気づける、というものでは無く、あくまで雑踏の中でも聞き分けられる能力がありますよ!不思議ですね!というものです
これも「選択的注意」の1つですが、
反面、私が目の前の友達との会話にあまりに夢中になっていた場合、おそらくきっと気付けません。
この時、私の注意(意識)は「目の前の友人との会話」に向いているため、その他の情報があまり入ってこないんです。注意を向けたいものがすでにある場合は、周りに目がいかないんです。
そして、これに関する不思議な実験があります。
アメリカで行われた面白実験
私達は、あまりにそれに集中している時には、そちらに対して「選択的注意」が向けられ、その他の事があまり考えられなくなります。
ここで、とある実験をご紹介します。かなり有名な実験です。
これは1999年にアメリカで行われたものです。
その内容は、こんな感じです。
実験の協力者には、バスケットボールで遊んでいる人達の動画を見てもらって、その動画の中で「ひとつの課題」に取組んでもらいました。
その課題とは「白い服を着ている人達が、何回ボールをパスしているのか、数えてみてください。」
というものです。
実はこの実験の動画は今でも公開されています。もしやってみたかったら、「選択的注意テスト」で検索してみてください。
ここからその内容について、触れていってしまうので、動画を先に見たい人はこの先には注意です。
~ここから実験の内容~
協力者たちは言われたとおり「白い服を着た人たちパスの回数」を数えました。そして多くの人が正答しました。
しかし、本当の課題はそちらでは無いんです。
ここで、もう1つの質問をします。
「ところで、この動画には何かおかしな点がありませんでしたか?」
「選択的注意テスト」と題された1分少々のその動画。実はその動画の最中に「ゴリラの着ぐるみ」を着た人が右から左へと、横切っていたんです。
なんなら画面中央に来た際には、ど真ん中でゴリラは胸を叩いてその存在をアピールしましたが、多くの人がそれに気付きませんでした。課題に取り込んで集中している人ほど、「白い服を着たボールを持った人」にしか目がいかないんです。
この実験は一躍有名になり、2004年にはイグノーベル賞を受賞します。
ちなみに、イグノーベル賞とは「人々を笑わせ、そして考えさせられる事」に対して贈られるものです。
この実験から分かる事は、
どうやら私達はあまりにそれに対して意識を向けると、その他の事柄をあまり考えられなくなるようです。
今回の記事で言いたかった事は、これらを鑑みた場合に、
「やっぱり歩きスマホやわき見運転は危ないんです。」という事を言いたかったわけでは無いんです。
ただ、歩きスマホは私達の認知機能を知れば、とても危ないことはご理解いただけるんじゃないかと思います。そのスマホの画面に映るものが、自分にとって面白いほどに周りが見えなくなり、事故にあう危険が高まります。
今回言いたかった話は、そういう事じゃなくて「選択的注意」をうまく使えば、メリットとして利用できます!という事です。
ここまで読んでいただいた方には、私達は「選択的注意」によって、それに集中したり、夢中になっている最中は、「その他のことがあまり考えられなくなる」という事はお分かりいただけたんじゃないかと思っています。
じゃあ、これをメリットとして使っていくにはどうしたら良いんでしょう。
これが今回の本題です。
選択的に注意(意識)するメリット
結論を言ってしまえば「趣味を持つと、人生が豊かになる事が分かってます。」という事です。
例えば、大変な仕事を抱えたり、仕事に不満があって寝ても醒めても仕事の事を考えてしまう。
こんな事はきっとどなたであってもご経験があると思います。
家に帰ったら仕事の事を考えない、というルールを設定しましょう!と言われても、分かっちゃいるけど止められない。という方もいらっしゃると思います。
こんな時は、私達の注意が「仕事の悩み」ひいては「悩み」にずっと向かっている状態ですよね。
だとすれば、その注意を他の事に向ける事に成功すれば、「悩み」がない時間が作れると思います。
つまりは、集中しないと出来ない「趣味」を持つ事は、とても有効です。
実際に、「趣味」を持つ人と、そうでない人は短期的にも長期的にも「メンタル」が安定しやすい傾向が確認されています。人生が豊かになる傾向もあります。
何でも良いんです。趣味の時間を設けてみるんです。
大切なのは「それをしていて自分が楽しいかどうか?」です。
「生きがいレベル」の高尚なものなんかじゃなくったって良いんです。
かっこいいものじゃなくったって良いんです。
自分の時間を作れれば、なんだって良いんです。ただただ、没頭してしまいましょう。
私達が生活の中で重きを置くべきは、むしろ没頭できる何かです。
時に、自分の時間が取る事が出来ないとおっしゃられる方もいらっしゃいますが、そういった方は少し頑張りすぎていると思います。
自分のために時間を使うから、余裕のある気持ちで毎日を過ごせるものだと、私は強く感じます。
その頑張りを、その注意を、もっと自分に使ってみませんか?
今日のあなたの一日が「選択的に趣味に没頭し始める」一日である事を願って。
読んでいただきありがとうございます!!