今回は、性格心理学の話です。現在において最も有力で、最も科学的根拠を持った「性格の特性」を表している「ビッグ・ファイブ」についての内容をご紹介します。今回は「性格」について、掘り下げていきます。
では、早速いきしょう!
ビッグ・ファイブ
当然ながら、私達には個性があります。人それぞれであるその個性によって、私達は全く同じ場面に遭遇しても、一人ひとり全く違う反応をします。
例えば、誰かから侮辱を受けた場合、
ある人は怒りを覚え
ある人は悲しみに暮れる
ある人は笑い飛ばし
またある人は気にもとめていない
こういった違いがあります。
では、このような反応の違いはどこから生まれるかというと、端的に言えば先ほど冒頭で言ったように「個性」なんですが、もっと別の言い方をすれば私達の「性格の特性」が大いに関係しています。
これら「性格の特性」を分かりやすくしたものが「ビッグ・ファイブといわれる、性格の5要素」です。
「ビッグ・ファイブ」は、
「外向性」「神経質傾向」「誠実性」「協調性」「経験への開放性」の5つの性格特性の組み合わせから、私達の性格とその性格からなる反応を、ある程度の、それもかなり高い精度をもって示してくれます。
ビッグ・ファイブの診断は検索すれば出てきますので、もしご興味があればやってみるといいと思います。
どの特性も一長一短であり、どれが駄目だということではないんです。高ければいいというものでも、低ければいいというものでも、中間だからいいというものでもありません。
特に「神経質傾向」については「私は神経質傾向が高いから、ダメダメじゃん・・・。」となってしまいがちな特性ですが、これについても「その特性独自の強み」があります。
さて、少しだけ話がそれましたが、今回はこの「ビッグ・ファイブ」の特徴を理解して、自分の性格を知っていこう、といった回です。
一つひとつ見ていきたいと思っていますので、まずは「外向性」からご紹介します。
外向性
外向性は、外向きか内向きかを示す特性です。
外向性が高い人
その焦点が、より外向きになります。
考えるよりも行動、大人数でいる事が大好きで一人があまり好きじゃない傾向が強いです。
とにかく前に進みたいので、社会的成功などに貪欲です。
大きな成功もする反面、大きな失敗もしがちです。
この特性だけ見れば、とにかくやってみるタイプです。
外向性が低い人(内向性が高い)
その焦点がより内向きになります。
行動する前には内省し、大人数より少人数。一人があんまり苦じゃない傾向が強いです。
自分の中にしっかりとした価値を持っていることが多くて、自分の価値が満たされるような、平穏な生活を守りたいと考えます。
また、大きな成功にそんなに興味がない事も多い反面、内省が得意なので明らかに失敗するような機会も少ないです。
他の特性との組み合わせ
また、「ビッグ・ファイブにおける外向性と内向性」は、「社交性」とはちょっと違います。
外向性が比較的高いと社交性も高めの傾向があることは言われてはいますが、中にはこんな場合もあります。
「みんなと本当は話したいけど、恥ずかしさもあって中々上手くいかない。」
こういった場合は、後述する「神経質傾向」との組み合わせが影響している可能性が高いです。
つまりあくまで社交的であるかどうかは、「外向性」だけでは判断がつかないんです。
それでも飛びぬけて外向性が高い場合は、行動できてしまいます。
それとは別に、「外向性」が高く、後に紹介する「協調性」が低い場合、
「俺が俺が」となってしまい、しばしばトラブルに巻き込まれます。
じゃあ「外向性単体ではつまりどういうものなの?」というと、
「外向性」とは「ポジティブな感情に反応しやすいか否か」という特性です。
高すぎれば、「やりすぎて」してしまい、低すぎると「やりすぎをそもそもそこまで必要としていない」、そんな特性です。
また、外向性が低い人に関して言えば、「ポジティブな感情に反応しにくい」だけであって、全く反応しないわけではありません。
神経質傾向
神経質傾向は、簡単に言えば「ネガティブな感情に反応しやすいか否か」という特性です。
神経質傾向が高い人
現状に対して(外側の環境に対しても、内側の心に対しても)不満を持っていることが多いです。
そして、深く考えるのがとても得意です。
また不満を抱きやすく深く考えるために、失敗を極端に嫌うところがあります。
ところが、その特性もあってか「比較的努力が出来てしまう」といった特性でもあります。
神経質傾向が低い人
現状に対して不満がない、とまでは言いませんが「そんなもんか」と割り切ることができます。要は不満が少ない傾向があります。
その不満の少なさから実に堂々としていて、皆に頼りにされることも多いです。反面、他の特性のとの組み合わせ次第では「人の気持ちが分からない」と言われてしまうかもしれません。ただ、これ単体の特性で言えば、デメリットがありません。
他の特性との組み合わせ
単純に「神経質傾向」だけ見れば大まかにはこのようになりますが、これが例えば
「神経質傾向」が高く、後にご紹介する「統制性」や「協調性」も高い人は、いわゆる「ワーカホリック(仕事中毒)」に陥りやすいです。
一言で言えば
「毎日は辛いが、皆の期待に答えなければ。これをやれば少なくともみんなは嫌な思いをしない。」と自己犠牲的になりやすいです。
こういった方も「神経質傾向が低い人」と同様に、頼りにされてしまいがちなんですが、実はかなりの無理を自分に強いています。
反面、「神経質傾向が」低い人は「まあやるか」くらいでそちらに対しても不満を抱きにくいです。
また、「神経質傾向」が高く、更には後にご紹介する「経験への開放性」が高い人は、その才能を爆発させる事があります。
芸術家さんにとても多いようですが、こういった方は「努力の塊であることも後押しして、創造性が豊かである」傾向が高いんです。
ただ、反面不満を抱えている人も多いです。ですが、それが表現になって爆発したりもします。
統制性(誠実性)
統制性(誠実性)は「衝動に対する自制心が強いか否か」です。
統制性が高い人
衝動に対しての強い自制心を持ち、「これはいけないな」と抑制することができます。
また計画を立てコツコツと作業することに長けています。
しかし、ルールを自分の中に決めた場合にそのルールから逸脱することを苦手とします。
「いけない」と思ったことに対して強いブレーキがかかるので、悪く言えば頑固なところも出てきます。
統制性が低い人
衝動に対しての自制が利きにくいです。
「それがいけないことなのは分かるけど、それでもやってみたい。」という気持ちが勝ってしまいます。
しかし、例えば
「自由に時間を使ってください」と言われた時、「何もしないでその時間を過ごす事」に余計な罪悪感を抱いたりしないです。
また、対人関係は難なくこなせる方も多く、よく言えば柔軟で、悪く言えばいい加減です。
自制が利きにくいというと少し語弊がありそうなので、少し補足をしますが、
これは「自制が利きにくい」のであって「自制する気がない」わけではないという意味です。
脳から見れば、自制や抑制は前頭前野の特に「背外側前頭前野(DLPFC)」で担っていると考えられていますが、比較的「統制性」が低いスコアの方の脳を見ていくと、その部分は命いっぱい活性化しています。
つまりは、内側からやってくる衝動に対して、自制を働かせようと懸命にやってはいるけれど、衝動が勝っている、という状態です。
しかし、
統制性は必ずしも衝動の対象がポジティブな感情ではないんです。
例えば、アルコール依存症に関して言えば
アルコールによって誰かに迷惑を掛け、自分にもいい影響がないことが分かっているのに、習慣化されたその活動を抑えることができないんです。
確かに飲酒している間は、嫌なことを忘れられたりもしますが、これはどちらかというと「嫌な感情からの脱出をしたいがための衝動」です。
つまりは、ポジティブになりたいから依存するのではなく、ネガティブを捨てたいがために依存してしまいます。
ただこれについては、習慣によるところが大きいんです。
その習慣を物理的にこなせないようにすることは、快復への有効な対処になり得ます。
協調性
協調性は「共感能力の高さ」です。
協調性の高い人
協力的で信頼されることも多く、思いやりがあります。
また、社会性が高く、誰かを罵る事をとても嫌います。人の気持ちがわかる人です。
反面、あまりにも共感しすぎてしまうので、「わかりすぎて辛い」となる傾向があります。
相手が何をしたいかも、相手がどんな気持ちなのかも察しすぎてしまいます。ただ、勘違いの場合もあったりします。「気を使いすぎだって」と言われることも多いんじゃないかと思います。
そして女性の方が全体的に少しだけ高い傾向があります。もちろん男性にも協調性が高い人もいますので、そこは留意すべき点です。
協調性が低い人
人間関係を割り切ることができます。というか、あまりに低いスコアの人は気にしていません。
極端に低くなると、冷淡で、不服従な傾向が出てきます。ただこれが攻撃性になるかどうかは、他の要素との関係で変わってきます。これについては後述します。
反面、仕事で出世する人はこの協調性が比較的低めであることが多いです。
よく言えば「ドライな人」で、悪く言えば「非情な人」です。
仕事においては特に「多少の非情な判断が必要な場面」が出てきます。その点においては、メリットにもなります。
他の特性との組み合わせ
「協調性」が高く、「神経質傾向」も高くなると、非常に辛い思いをします。
「相手の気持ちがわかるけど、不安が止まらない」といった気持ちになり、一時的な感情の高まりによって、ついつい悪態をついてしまう、のような経験が増えてしまう可能性が高くなります。
しかし、本当は相手の気持ちも痛いほどわかるので、悪態をついてしまった後に、大きな後悔をするんです。
本来の思いやりというメリットが、逆にその人を傷つけます。
また、「協調性」が極めて低く、「神経質傾向」が高く、「統制性」が極めて低い場合、嫌な言い方をすれば「共感できなくて、不安になりやすくて、でも自制が難しいタイプ」の場合は
相手の苦しみには共感がしづらく、衝動にも駆られる。そしてネガティブも経験しやすいので、「相手が傷つこうが関係ない。」という気持ちを抱きやすい傾向があります。
さて、私達はしばしば、人生のパートナーに対して、
「思いやりがあって、優しい人」と
「社会的成功を実現するような、出世頭のような人」といった
全く正反対の特性を同時に望んだりします。
しかし、どちらも持った人はそうそういないものです。
仕事は仕事、家庭は家庭。と割り切ることができる人は、おそらく
元は協調性が高かった方が、「仕事に関しては私情を挟んでいる場合ではないんだ」と痛いほど経験して、類まれな努力の基、両立しているような人くらいじゃないかと思います。
経験への開放性
いよいよ最後の特性である「経験への開放性」です。
「経験への開放性」は非常に説明がしにくいんですが、簡単に言えば「知的好奇心や創造性、多様性(違い)を好むか否か」です。
実際この要素についての見解は、依然として意見が分かれるところでもあります。
経験への開放性が高い人
独特の感性を持っている場合があったりします。
ある分野(特に芸術)に関して、ぞっこんになる素養を持っていて、唯一無二の知識だったりを好みます。
新しい何かに対しての好奇心は高く、その知識が創造性を加速させます。想像力も豊かな傾向があります。
反面、みんな一緒が苦手で私はこうありたいのような気持ちを強く持っている傾向があります。
経験への開放性が低い人
大きな変化を望まず、みんな一緒なことを好みます。
比較的常識的な傾向があります。
反面、特殊な考えが苦手で、新しい何かより古き良き慣習を好みます。
またその慣習をひとたび受け入れた場合は、その安心を繰り返したいと感じます。
他の特性との組み合わせ
これら5つの特性に関して、多くの人が中間より少し高いか、少し低いかに位置すると思います。
特に「経験への開放性」についてだけ言えば、おそらくは「新しい何かがしたい」と思う反面、「この慣習は守りたい」と感じているはずです。
日々退屈だなぁ、新しいこと無いかなぁと感じながらも、日常生活をこなす、のようなことがあるかと思います。
飛びぬけた感性を持つ芸術肌の人が「経験への開放性」が高く、それでいて「神経質傾向」も高い人が多いです。これは、「神経質傾向」のメリット(道が分かれば、そちらへ進むことが出来てしまうという強み)を「経験への開放性」へと向けた結果だと思います。
さて、今回は「ビッグ・ファイブ」についてご紹介しました。
「外向性」「神経質傾向」「統制性」「協調性」「経験への開放性」
この5つの特性が互いに作用しあいながら、私達を形作っている、というパーソナリティ(性格)についての科学でした。
最後に:気質と性格を使い分ける
今回「ビッグ・ファイブ」をご紹介しました。
このメリットとデメリットを理解することで、これからの私達に繋げることができるのではないか?と思っている次第です。
要はそのデメリットを上手く補い、メリットを生かしていくためには、まずはある程度の正確な「性格の分析」が必要だと感じました。
そして「ビッグ・ファイブ」以上に正確な科学による分析方法は、今のところありません。
また、私達は「気質」と「性格」と言う言葉をほとんど同じような意味合いで使っている場合が多いかと思いますが、もう少し詳しく見ていくと、
気質とは「先天的、遺伝的に持つ素養」の事であり、性格とは「先天的な素養を含む、後天的な経験による現状の心のあり様」の事だったりします。
つまり、気質は「遺伝的に予め備わった心」で、性格は「気質+環境などの経験による影響によって培った心」くらいの理解をするといいかもしれません。
気質は基本的には変えられないものですが、性格はその後の経験によっては緩やかに変化するものであると認識しています。そうだとすれば、このような性格診断は、「今の性格」を表すものです。
ですので、次回の記事にて
おそらく「悩みや苦しみ」になっているであろう「神経質傾向の高さ」を中心に、それをどうしていけばいいのか?について考えるために、
5つの要素をすべて組み合わせていこうと考えています。
今日のあなたの一日が「ビッグファイブで性格を知る」一日であることを願って。
読んでいただきありがとうございます!!